音大生への就職アドバイス【2】ピアノ専攻は体育会系である

2016年7月17日

第1回「言葉で表現すること」の記事が、すごいアクセス数でびっくり。このテーマ、求められているのでしょうか。早速、第2回を。

テーマは「音大ピアノ専攻は、体育会系学生である」です。

新卒採用の面接時、面接官が何を見ているかというと、結局のところ「ちゃんと長く勤めてくれそうかどうか?」が一番です(それだけじゃないですよ、もちろん)。

一般企業は、学生に特別なスキルを求めていません(もちろん、メーカーが研究者を採用したり、外食チェーンが調理師を採用する場合は別ですよ)。学生時代に得られるビジネススキルなんて、たかだか知れています。ビジネスの実戦スキルは、実戦でないと学べないものですから。

“すべての企業が”とは言えませんが、私は、新卒のスタッフは三年目で業績に貢献してくれればいいと思っています。企業にとっては二年間は投資です。大卒初任給が20万円とすれば、二年間で480万円(実際はこの他にも企業負担分の社会保険料や通勤交通費も必要です)の投資なのです。10人採用すれば、何と4800万円の投資です。

なので、企業にとって一番痛いのは、新卒スタッフが二年間働いて三年目に転職をしてしまうケースです。新しく買ったパソコンに、最初の半年でOSとアプリケーションをインストールして、次の半年でいろんなビジネスドキュメントもテンプレートとして使えるようになって、二年目に過去のデータも蓄積されるようになった!と思ったら、三年目、パソコンの盗難に遭ってしまうようなものでしょうか。うまい例えになっていませんが。

第二新卒が企業に注目されるのは、いわば、OSやアプリケーションがセッティングされ、テンプレートも蓄積された状態で、使い勝手のいいパソコンを安く獲得できるからです。ただ、私は、中途採用の面接の際、新卒三年目くらいで応募してくる人材には、厳しい視線で見ています。条件によって、またすぐに辞めてしまう可能性があるからです。

ですので、「まずは20代を一緒に働いてくれそうか?」が大きな指標になります。

と、まぁ、ここまでは、就職ガイドにありがちな話ですね。

では、音楽大学ピアノ専攻の学生は、この指標に合致するのでしょうか?

私は、合致すると思っています。

音楽大学、特にピアノ専攻に近いのは、体育大学における器械体操専攻やフィギュアスケート専攻ではないかと常々思っています。器械体操、クラシックピアノは共に、子供の頃から10数年間に渡る鍛錬が大切ですから。

商社系企業で、大学四年間を通じて体育会に所属していた学生が好まれるのは、「打たれ強さ」「粘り」などの性格があげられます(実際は、体育会出身の社員が多いため、同じキャラクターのスタッフを採用しようとする理由が大きいですが)。

ならば、「音楽大学でピアノを専攻すること=四年間、体育会でプレーし続けること」を、強力にアピールしてみてはいかがでしょうか?

その際、コンクール受賞歴や留学経験は、何ら採用の決め手にはなりません。むしろ、ピアノ実技の成績なんて悪くてもいいのです。才能などなくても、子供の頃から現在にいたるまで、厳しい先生の指導の下、ピアノをやり続けていることを、具体的なエピソードと共に面接官に語るべきです。例えば、ショパコンASIAの全国大会向けレッスンで、大晦日まで特訓を受けた話とか、ね。

私など、東京音大のH本先生の下で卒業した“才能ない学生”なんて、とても興味ありです。

音大生への就職アドバイス(全10回)

【1】言葉で表現すること
【2】ピアノ専攻は体育会系である
【3】会社をアナリーゼしよう
【4】経営者視点で見たピアニストと指導者の違いとは
【5】ウサギの視線、カメの視線
【6】「苦手」は克服しなくてもよい
【7】ハングリーで、おバカでいよう
【8】プロとアマチュアに境界線はない?
【9】努力は夢中に勝てないんです
【10】No.1になりポジションを可視化する


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