コロナ禍の時代の前奏曲集、ブラッド・メルドー『組曲:2020年4月』

ブラッド・メルドー

ビル・エヴァンス→キース・ジャレット→リッチー・バイラーク→ブラッド・メルドー、これが私のお気に入りのジャズピアニストの変遷です。

そういえば、私が大好きな某女性クラシックピアニストと、昨年じっくりと話をする機会があり、好きなジャズピアニストについて尋ねたところ、彼女もきっぱりとブラッド・メルドーを挙げました。同類は同類を好むのでしょう。

さて、2020年6月配信先行リリースのブラッド・メルドーのソロピアノアルバム『組曲:2020年4月(Suite: April 2020)』を、ここひと月ほど、在宅勤務のBGMとして聴き続けています(CD、LPリリースは9月18日予定)

コロナ禍の中、オランダで自粛生活を送っている彼が、暮らしの中で体験していることをベースに書き上げた12曲と、彼が大切にする3曲を、アムステルダムのスタジオでレコーディングしたもの。

朝、目が覚めたときに感じる漠然とした不安、それでも生きていることへの感謝。ふと思い出すコロナ禍以前の暮らしぶり。それでも、家族と触れ合う愉快な時間が増えたこと……世界中の人びとが、今、感じている想いを、内省的なピアノで淡々と描いています。

ブラッド・メルドー自身は“音楽的スナップショット”と語っていますが、私は「コロナ禍時代の前奏曲集」のように感じています。

100年以上前に作られたクラシックの名曲の場合、その曲が生まれた背景は本を読むなりして想像するしかありません。この『組曲:2020年4月(Suite: April 2020)』は、同時代に生きる今だからこそ、私たちの心を捉える名曲集ですよ。

下はブラッド・メルドー自身の解説・演奏動画です。

『SUITE:APRIL 2020』は、先月世界中の誰もが経験したであろうことを捉えた、音楽的スナップショットだ。多くの人々が共通して、また新たに体験し、感じたことをピアノで描こうとした。例えば“Keeping Distance”という曲では、左手と右手を通してソーシャル・ディスタンシングを実践する二人の人物の経験を辿っている――二人がいかに不自然な形で引き離されているか、そしてそんな状態でも何か説明のできない、啓蒙的な方法で繋がっているかを描いている。また、新型コロナウイルスによってもたらされた困難と同じぐらい、新たに明らかになった事実もある。“Stopping, Listening, Hearing”はそうした発見についての曲だ。

この一か月の間、特に強く感じたこともいくつか取り上げている。“Remembering Before All This”は、ほんの数か月前はこうだったのに、今はそれも遠い昔のことに思えると考えた時に突然襲ってくる、ほろ苦い、直感的な痛みを表現している。”Uncertainly”は、そう考えた後の感情――不透明な将来に対しての虚ろな不安“を取り上げたものだ。

また同時に、あり余るほどの時間と、より近くなった距離によって、今までにないぐらい家族との絆を深めることができたという歓迎すべき面もあった。最後の3曲は、その絆についての曲だ――一緒に食事を作ったり、ただふざけあったりしている時に、互いから生まれるハーモニーをね。“Lullaby”は、今不眠にさいなまれている人たちへの曲だ。

ワーナーミュージック ニュースリリースより

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