鍵盤はなぜ「鍵」の「盤」なのか? 語源を考える

「鍵」というよりスイッチ、積み木に見える

物心ついたときから、何の疑いも持たず、ピアノの指が触れる部分を「鍵盤」と呼んでいます。

ふと思ったのですが、鍵盤ってなぜ「鍵」の「盤」なのでしょう?

「盤」は何となくイメージできますが、指が触れる部分は「鍵」には見えないですよね。スイッチ、てこ、積み木に見えます。不思議だ。

なぜ「鍵」なのか? 鍵盤楽器の歴史をさかのぼって、語源をちょいと調べてみました。

鍵
Image by Anja from Pixabay

鍵盤楽器はオルガンから始まった

今でこそ鍵盤楽器はピアノが代表のイメージがあります。ですが、鍵盤楽器の中でピアノは比較的後発。前身にチェンバロやクラビコードがあったのは、このブログの読者ならご存知のはず。

でも、鍵盤楽器の中で一番長い歴史を持つのはオルガンなのです。

最古のオルガンは、紀元前3世紀頃に発明された水圧オルガン「ヒュドラウリス」とされています。ギリシャの発明家で数学者のクテシビオスという人が、水圧で空気を押し出してパイプを鳴らす仕組みで楽器を作りました。

クテシビオス製作・水オルガン
クテシビオスが作ったと言われる水オルガン

お風呂の湯船で洗面器を逆さにして沈めていき、あるところで洗面器を傾けると、バコッと空気の泡が勢いよく上るじゃないですか。その原理の応用ですね。

時代が経て、水圧の代わりに(足で踏む)ふいごで風を送り込むようになり、教会で見られるようなパイプオルガンが発展していきました。

パイプオルガンの空気弁を「鍵」と呼んだ

パイプオルガンが発展したのはバロック時代の北ドイツやオランダ。

現在、ドイツ語・オランダ語で鍵盤楽器は「klavier」(クラヴィア)ですが、かつては「clavier」と表記されていました。平均律クラヴィーア曲集の原題は「Das Wohltemperirte Clavier」です。

「clavier」という言葉はラテン語の「clavis」が語源で、「鍵」「門番」「関門」の意味があります。ちなみに英語の「Key」にも「鍵」の他に「(ある場所に至る)要所,関門」という意味があります(プログレッシブ英和中辞典)

パイプオルガンは、パイプの先端に弁を取り付け、音を鳴らす時は、弁が開いて空気を送り込むようになっています。パイプへの空気の出口を開閉する弁がある場所こそ「関門」であり、「clavis」「Key」とされていました。

何となく近づいてきましたね。

パイプオルガン
Image by Aline Dassel from Pixabay

で、パイプオルガン以外のチェンバロ・クラヴィコード・ピアノも、空気圧・ハンマー・ピッキングと発音の方法は違えど、ズラリと並んだスイッチに指が触れて音を発するという仕組みは同じ。そして「要所」。そこから転じて「clavier」=鍵盤楽器となったようです。

英語では「鍵が並んでいる盤」で「Keyboard」。日本語で「鍵盤」と翻訳されると、なるほど!と納得できました。


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