ピアノを再開した大人が、レッスン初回に用意すべきこと

2019年2月19日

10年前に私がピアノを再開したとき、最初のレッスンでピアノの先生とうまく噛み合わなかったことがありました。

下は、初回のレッスンについて書いた日記。

読み返すと、一つここに書いていないエピソードがあります。

10年前の自分自身にアドバイスしたいこと

レッスンを始める前、上のS先生が「あなたは、どうなりたいの? 今から音大受験を考えているわけじゃないでしょ?」とおっしゃいました。その時、私はこのような質問を想定しておらず、「え? えっと、ピアノがうまくなりたいです」と、ちょっと狼狽しながら答えました。その言葉を聞いて、先生がちょっと困った顔をされたことを思い出しました。

その時、私は「ピアノを弾くのに目標なんて即物的だ」とか、「僕は、ただ純粋にピアノがうまくなりたいだけなのに」とか、モヤモヤした気持ちを抱えながら、家路につきました。

この「純粋にピアノがうまくなりたいだけなのに」という気持ちは、その後しばらく心の真ん中に居座っていて、「人前で演奏する」「コンクールに出る」といった行為は、何やら自己顕示のためで、動機が不純のような気がしていたのです。

私もそうでしたが、一部の中年男性はピアノへの愛がピュアすぎて、清教徒というか、原理主義者というか、音楽への姿勢が極端な人がいるんですよね(苦笑)。

それから10年が経過。今の私なら、10年前の私に「ただ、うまくなりたいって、そりゃ、ピアノの先生も指導に困るだろう」とアドバイスしたいです。

「うまい」というのは曲者です。自分が考える主観的な「うまい」は自分でしか判断できません。一方、客観的な「うまい」は、最低一人でも(自分以外の)音楽を聴く人が必要です(将来、人工知能が発達すれば状況が変わるかもしれませんが)

ですので、論理的に考えると、ピアノの演奏は聴いてもらう人がいないとうまくはなれない。独習で部屋の中で一人で弾いていてもうまくはなれない、というのが私の持論です。

もちろん「独習&人前で演奏しない」という姿勢を否定するものではありません。人前で弾くことで、演奏後に顔を覆いたくなるような苦しみが生まれますので。

というわけで、大人の場合、なりたいイメージを、最初にピアノの先生に伝えないとなかなか指導しづらいと思うのです。子供の指導なら「おけいこごと」として、ある種のテンプレートに基づいた指導も可能だと思いますが、大人は、何を弾きたいのか? どこで弾きたいのか? が明確なほど指導しやすいはず。その上で、「いつ、どのくらい弾けるようになるのか?」は、生徒個人の技術力や練習にかけられる時間により、異なってくるでしょう。

大人のピアノ再開組が、最初のレッスンまでにぜひ用意しておきたいこと、それは「何を、どこで弾きたいか?」だと確信しています。

何を弾きたいのか?

一番よいのは、やはり弾きたい曲を伝えることだと思います。いま、大人でピアノを初めた女性の間ではエリック・サティの「ジムノペティ」が弾きたい曲として、とても人気だそうです。一昔前なら「幻想即興曲」あたりでしょうか。ジムノペディを弾いてみたい気持ち、よく分かります。ぜひ弾いてみたい2、3曲を、初回のレッスン時に相談するのがよいのでは。

いきなりベートーヴェンの「熱情ソナタ」を弾きたい、ショパンの「英雄ポロネーズ」を弾きたい、というのは無謀なようで躊躇しますが、私はそれでもいいと思っています。その曲を弾きこなすのに、必要な技術力、分析力、構成力等を具体的に挙げて、生徒の力量を見極めた上で、弾けるようになるまでの道筋を示すのは指導者の仕事なのですから(途方もなく険しい道筋であるにせよ)。

その上で、生徒とのコミュニケーションにより、

  • 「熱情ソナタ」の平易な編曲版をやって手軽に雰囲気を楽しむ
  • 「熱情ソナタ」の前にまずはベートーヴェンの平易なソナタをやってみる
  • たとえ16小節だけでも「熱情ソナタ」の一番好きな箇所だけ体験してみる

等、レッスンの方向性は見えてくると思います。

大人の生徒の初回レッスンでピアノの先生が求められる能力は、指導能力以前にコンサルティング能力かもしれませんね。

ただ、意識高い系大人の生徒にありがちなのは、大曲を目指しがちなところ。一方、昭和のピアノの先生にありがちなのは、チェルニーやブルグミュラーの練習曲を一曲ずつ進めるような指導を行いがちなところ。初回のレッスンでは、ここの意識のすり合わせ、曲のマッチングが、その後のためにとても重要な気がします。

ともかく、初めてのレッスン前に生徒が「弾きたい曲」を用意しておくのは大切です。ここで「用意する」というのは、弾けるようになっておくという意味ではありません。

ちなみに私は、レッスンの後、弾きたい曲について「あの曲、どう?」「この曲は無理」なんて師匠とやりとりする時間が、実は一番楽しいひと時だったりします。

どこで弾きたいのか?

もう一つ、初回のレッスン時、生徒からピアノの先生に伝えるのによいのが「シチュエーション」。

「娘の結婚披露宴でピアノを弾きたい」「息子と親子で家で連弾をしたい」「バンドを組むので基本的な技術を磨き直したい」等々。

やりたい曲が決まっていなくても、具体的なシチュエーションがイメージできれば、先生は選曲を含めてアドバイスしやすいと思います。

音楽大学出身のピアノ指導者のタイプに、接した音楽がほとんどクラシックだけという方が時々おられます。シチュエーションを目標とした場合は、クラシック以外のレパートリーを持つ先生の方がよいです。

少し話が脇道にそれますが、私、若かりし頃、大阪・北新地のレストランでポピュラーピアノを弾いていた頃がありました。その頃、ジャズピアノを教えてくれた先生から1冊の本を指定されて、ここから最低20曲、できれば50曲をレパートリーにしておくように、といわれたことがあります。

この「永遠のポップス」という楽譜はバー、ラウンジで求められる楽曲をカバーしてある優れものでした。結婚式、パーティー等でニーズのあるピアノ曲は、クラシック以外に多いです。

ところが、以前、こんなことがありました。立派なグランドピアノがあるレストランのパーティー会場で、たまたま若いピアノの先生がいたので、おじさん数人が「ぜひ、ピアノを弾いて!」とリクエストしたんですね。

で、音大出身のピアノの先生、いきなりドビュッシーの『映像 第一集』の「運動」を弾き始めたのです。おじさん全員、ポカーンでした。しかも、「運動」を最後まで弾いてしまうという。

シチュエーションを重視する場合は、子供をコンクールに向けてがっつりと指導しているピアノの先生よりは、映画やテレビドラマ、ディズニー等、多少ミーハーで「社会性ある」先生の方が、大人のシチュエーションニーズに応えることができそうな気がします。

というわけで、大人のピアノ再開組、最初のレッスンでは、「何を、どこで弾きたいのか?」を、ぜひ明確にして臨むようにしてくださいね。


【お願い】ブログランキングに参加しています。読んだらこちら(にほんブログ村へ)をクリックいただけないでしょうか。励みになります。