映画『トウキョウソナタ』を観た

2014年5月26日

 
映画『トウキョウソナタ』を、師匠と門下のK君、私の三人で観に出かけた。座席は、師匠を挟んで現役男子と元男子の私。今風にいうと“いきものがかり”状態、私の世代でいうと“ドリカム”状態。でも、師匠と私の間は20歳ばかり、私とK君の間も20歳ばかり年齢が離れているので、端から見ている人はどのような関係の三人なのかちょっと想像つかないだろうな‥‥。

ストーリーについては、こちらを参照。

リストラされた中年の父親を演じた香川照之が光っていた。中途採用での面接、リストラされた同級生同士の会話等、わさびが利いたジョークが散りばめられているけど、彼の演技には妙にリアリティがあった。最新の高層ビルに本店を構える、一見優良な会社が実は債務超過に陥って、ある日突然倒産をしたりする都市。笑うに笑えないトウキョウ経済の実情や、核家族における「父親の権威」という虚構に深く共感した。

ただ、私がピアノに近い場所にいるからか、窓を開けっぱなしのピアノ教室(普通なら近所から苦情が来るはず)、リストラされた父親&専業主婦家庭の音楽中学受験(キョンキョン演じる母親がパートでもハケンでも働きまくらないと)という設定は、ちょっと無理があったかな。井川遥演じる金子先生も、綺麗で華があっただったけど、今ひとつ存在感が乏しかった。

ラストシーンが印象的だった。音楽大学付属の中学の入学試験、主人公の男の子が演奏を終えた後、家族三人で試験会場を立ち去るシーン。その場にいた審査員も他の父兄も、不思議な表情で三人で見送る。一見、“天才少年”を息子に持つ「うまくいっている家庭」にしか見えない。だけど、父親のリストラ、母親の失踪、子供の家出‥‥誰もうかがい知ることでできない家族の陰影が、試験曲のドビュッシー「月の光」の背景に、その輪郭のみ垣間見られる。

100の家庭には100の課題があって、外からはうかがい知ることができない。光り輝く「幸せな家庭」など、ない、と思う。時折感じる一瞬の光と一瞬の温もりが好きで、とりあえず毎日を過ごす、というのがトウキョウの家庭の実情では。


トウキョウソナタトウキョウソナタ(DVD)
出演/香川照之、小泉今日子他
監督/黒沢清
発売/メディアファクトリー


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