スタイリッシュ! ピアニスト・有島京さんにインタビュー

2018年1月18日

2015年のショパンコンクールでは、第二次予選の“最終走者”で演奏。“謎の日本人ピアニスト”として、私の周囲のピアノ好きの間で大いに盛り上がった有島京さん。10月下旬に、彼女と新宿でランチをしました。

ピアニスト・有島京
Photo : Aleksandra Mleczko

彼女と知り合ったきっかけは、私のブログを読んだ出身地・熊本の方より、今年3月のリサイタルのご連絡をいただいたこと。紀尾井ホールで行われたリサイタルには、もちろん出かけました。終演後、ご本人だけでなく、お母さまにもご挨拶させていだき、ブログを通じた不思議なご縁を感じました。

有島さんは桐朋女子高校の音楽科を卒業後、ポーランドに留学、その後、7年間当地で活動されています。この秋、日本に帰国する際、東京に立ち寄るので、お食事でもということに。東京の音楽関係者はほとんどコネクションがないとのことだったので、2015年のショパンコンクールの現場におられた大手楽器メーカーのアーティストサポートのご担当者と、クラシック関係の若手ジャーナリストをご紹介。4人で食事をしました。

アーティスト写真やインタビューでは寡黙な女性を想像していました。が、実際にお話すると、饒舌ではないものの、熊本方言が交じる飾り気のないお人柄。ポーランドの生活の話題で会話が弾み、2時間があっという間に過ぎました。

紀尾井ホールでのリサイタルの感想

そういえば、今年3月に行われた紀尾井ホールでのリサイタルの感想を書いていませんでした。書き留めておかねば。

800席の紀尾井ホールは8割以上埋まっていました。東京での知名度が低いにも関わらず、抜群の集客を誇ったのは、熊本県人会の方々の呼びかけで、在京の熊本出身者の方が集合されたから。熊本人の結束力にびっくり。私、埼玉人ですが、ユルい埼玉県民にこのような結束力はないと思われます。

プログラムは下記。

  • モーツァルト/幻想曲 ニ短調 K.397
  • シューベルト/ピアノソナタ 変ホ長調 D.567
  • (休憩)

  • ショパン/舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
  • ショパン/4つのマズルカ Op.33
  • ショパン/スケルツォ 第4番 ホ長調 Op.54
  • シマノフスキ/2つのマズルカ Op.62
  • セロツキ/プレリュード組曲(1952)
  • 1曲目のモーツァルトの幻想曲ちょっと手探りの印象でしたが、プログラム後半から彼女らしさが出た印象。ショパンコンクールの動画で聴いた「舟歌」は、特に最初の高く消え入るような二音目が印象的でした。

    圧巻はカジミエシュ・セロツキの「プレリュード組曲」。私、生で聴くのは初めて。12音技法を用いた現代曲ですが、緊張感と情緒性が同居する、彼女の世界観を十二分に感じる演奏でした。近・現代曲を表情豊かに弾くピアニストっていいなぁ。下がセロツキの「プレリュード組曲」。

    リサイタルのプログラムに、彼女が師事しているカタジーナ・ポポヴァ=ズィドロン氏(第17回ショパン国際ピアノコンクール審査委員長)の紹介文が書かれていました。

    彼女の演奏には冗長な語りや、聴衆の受けを狙うはったりがありません。作曲家の思想と真摯に向き合い、演奏される作品に込められた情緒、感情の高ぶりのとても親密な世界へと、聴衆を引き入れるのです。(中略)京は、作曲家と聴き手との間の「架け橋」としての地位を占め、そしてそれは、すばらしい架け橋なのです。

    まさに。セロツキの演奏はそんな「架け橋」を感じました。

    蛇足ながら、終演後、プログラムにサインをもらいました。私、幼少の頃から数多くのピアニストの演奏会に出かけていますが、サインをお願いした人は初めて(笑)。

    有島京リサイタルプログラム

    おしゃれなスタイルにびっくり

    さて、新宿のレストランに現れた有島さん、3月のリサイタル時はロングヘアにお会いした時から、髪をバサッと切ってボブのスタイルに。とても雰囲気が変わってびっくり。黒いタートルネックのシャツも似合っていて、ピアニストというより、女性誌のスタイリストのようなたたずまい。

    有島京さんとランチ
    また、彼女のポーランドでの活動写真を拝見すると、日本の女性ピアニストによく見られるプリンセス系のドレス姿とは違った、個性的なスタイルに目が留まりました。カフェ、ライブハウスで現代曲、室内楽の演奏も行っているらしい。

    ピアニスト・有島京
    Photo:Pytlik & Bak

    有島京 演奏会 チラシ
    ポーランドでの演奏会のフライヤー

    以下、ちょっぴりインタビュー。

    ―――リサイタルで演奏されたセロツキ、素晴らしかった。現代音楽に興味あり?
    「今後取り組みたい作曲家として興味があるのは、ポーランドを中心とした現代作曲家でしょうか…。現在、技術的にもスケールの大きい作品をいくつか勉強しており、そのほかセロツキのピアノソナタや、シマノフスキのもう少し大きな作品、歌曲等に取り組んでます。まだまだ自分に足りない部分を身に付けていく一方、自分らしいといえるレパートリーも増やしていくことを心がけてます」

    ―――首都ワルシャワではなく、地方都市ビドゴシチを拠点にしている理由は?
    「ポポヴァ先生(国立ビドゴシチ音楽院ピアノ科主任教授)との勉強を続けていることが一番の理由です。ここ数年、もっと大きな街に住みたいと思うことは多いけど、今まだ研究科に在籍していることと、子供に少し教えたりもしているので、今のところ別の街に引っ越す理由はありません」

    ―――ビドゴシチのいいところは?
    「この街に留学できてよかったのは、落ち着いた環境でゆっくり勉強できたことでしょうか。ビドゴシチの学校は規模も小さいので独特の温かさがあり、入学したときから日本人が1人、2人だったので、周りのポーランド人の先生や友達にだいぶお世話になり可愛がっていただいただいたことが貴重だったなと、本当に感謝しています」

    ―――最近、ドイツにも演奏の場を増やしているの?
    「ただ、昨年よりお世話になっている先生がドイツにいらっしゃることや、留学当初からドイツにお住まいの方といろいろご縁があり、ドイツでの活動が増えるのは、自然な流れでしょうか。ベルリンはビドゴシチから近いということもあります」

    有島京さん、次回の日本(できれば首都圏)での演奏を楽しみにお待ちしています。

    ピアニスト・有島京
    Photo : Aleksandra Mleczko


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