「100台のメトロノームによるポエムサンフォニック」で死を感じた

東京交響楽団(ミューザ川崎)
毎度、11月下旬から12月にかけては、「晩秋の芸術シーズン」とでもいいましょうか、毎週のようにコンサートに出かけています。

ブログに書けていませんが、先々週はエマニュエル・アックス&東京交響楽団、先週はクリスティアン・ツィメルマン、明日は新国立劇場でオペラ「フォルスタッフ」、その後、金子一朗さん、中澤真麻さんのピアノリサイタル、そして門下発表会と続きます。

「通」好みの挑戦的なプログラム

さて、11月23日(祝)、ミューザ川崎で行われた東京交響楽団の「名曲全集 第112回」は、ユニークなコンサートで刺激を受けました。座席も前から8列目のど真ん中という、かつて経験したことのない特等席でした。

演奏家は指揮がジョナサン・ノット、ピアノがエマニュエル・アックス、オーケストラは東京交響楽団。

プログラムが挑戦的!

リゲティ/ポエム・サンフォニック 〜100台のメトロノームのための〜
J.S.バッハ/ストコフスキー編「甘き死よ来たれ BWV 478」
R.シュトラウス/ブルレスケ ニ短調 〜ピアノと管弦楽のための〜
(休憩)
ショスタコーヴィチ:交響曲 第15番 イ長調 作品141

一連の定期演奏会のプログラムを眺めると、クラシック初心者に向けたものもあれば(ベートーヴェンの6番とかチャイコフスキーの「悲愴」とか)、今回は明らかにクラシック好きに向けたプログラムですな。

今回は14時半開演ですが、14時の開場と同時に「ポエム・サンフォニック 〜100台のメトロノームのための〜」の演奏が開始されているというもの。最後のメトロノームの音が鳴り終えた後、開演ベルは鳴らず、その後、切れ目なく、バッハとリヒャルト・シュトラウスの演奏が続きました。下は入場時に配られた注意書き。

東京交響楽団(ミューザ川崎)

リゲティの現代曲で「死」を体感

ホールに入場すると、100台のメトロノームがコチコチと響いています(メトロノームはヤマハ製でした。これ、買ったのかなぁ)。メトロノームはそれぞれが違ったテンポに設定されているので、ホールにランダムに鳴り響いています。

入場した聴衆は、100台のメトロノームが並ぶ珍しい光景をスマホで撮影したりしていますが、オーケストラのメンバーがそろりと入場すると同時に全員座席へ。いつの間にか、オーケストラ、指揮者、聴衆全員で、メトロノームの響きを聴くことになります。

100台のメトロノームは1台ずつ徐々に止まっていきますが、圧巻は残り数台になってから。別々のテンポのメトロノームは、それぞれが響きつつも、時折一緒に響く瞬間があります。100台の「演奏」では工業製品としてのメトロノームの音としか感じなかったのものが、残り数台になった時点で、まるでヒトの心拍のように聴こえました。

やがて最後の一台になり。聴衆もオーケストラメンバーも、全員「その瞬間」を待ちます。手に汗握る緊張感でした。

そして、訪れる静寂。「死」を感じた一瞬でした。

と共に、指揮者がタクトを持つ手をゆっくりと上げて、J.S.バッハの「甘き死よ来たれ BWV 478」の演奏が始まります。

いやー、素晴らしかった。演劇的な仕掛けにやられました。

打楽器大活躍! ショスタコーヴィチ「交響曲 第15番」

バッハの後は、またも静かにリヒャルト・シュトラウスの「ブルレスケ ニ短調」を開始。派手なコンチェルトだけれど、エマニュエル・アックスのピアノは響きがクリアで本当に美しかった。やはりピアニストは響きだな、と改めて思いました。

「ブルレスケ ニ短調」の終演後、ここでようやく拍手。演奏ももちろんだけど、コンサートの組み立てに唸らされました。

エマニュエル・アックスのアンコールは、ブラームスの「間奏曲 op.118-2」。選曲がいい! アンコールにブラームスの間奏曲を弾くピアニストの音楽は、私、通じ合えるものがあります(リストの「ラ・カンパネッラ」を弾くピアニストとは通じ合えないです)。

後半のショスタコーヴィチの交響曲は、私、生で聴くのは初めて。

オーケストラのメンバーが、順番にソリストとなるような室内楽的な楽曲。ロッシーニやワーグナーのフレーズがところどころに引用されて、「キュレーションの妙」が楽しい交響曲。

バイオリンとチェロのソロも聴き応えあったけれど、これほど打楽器メンバーが活躍した交響曲を聴いたことなかった。ティンパニのほか、シンバル、トライアングル、大太鼓、小太鼓、タンブーラ、カスタネット、ビブラフォンと、色彩豊かな響きだった。

終演後、ロビーでオーケストラメンバーの紹介パネルを見ていると、若い打楽器奏者の女子を発見。みんな、いかにもクラシック音楽のポートレートというポーズの中で、一人、タンバリンを頭にかぶって可愛かった。

東京交響楽団・綱川淳美
ミューザ川崎。何度か訪れているけれど、ここで行われるオーケストラの演奏会には外れがない。

上野東京ラインの開通で首都圏北部からもアクセスしやすくなったし、今後もしばしば出かけそう。


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