アールンコンクール全国大会報告(後編)

2014年5月26日

一週間遅れましたが、コンクールレポート後編です。※前編はこちら

ブルーな気分のまま、ホールを出て大船駅方面へ。いろんな店を眺めつつ、大船の街をプラプラと一周する。せっかく大船まで出て、ランチがファストフードというのは寂しい。カフェレストランっぽい看板とカレーのメニューが目に付いたので入ってみた。一昔前のキャンパス通りのお店って感じ。「カフェ・プラス・アールビー」という。

煮込みやさいカレー、和牛ビーフカレー、フォンデュ風カレー等、いろいろあるが、和牛すじ煮込みカレーをオーダー。そういえば、栃木予選の後もカレーを食べたっけ。演奏の後は、カレーが食べたくなる習性があるようだ。カレーが客席にやってくるまでの間、門下のMさんにメールする。

演奏終了しますた。ダメだこりゃ。細かいミス多すぎ。何とか弾き通しましたがね。しかし、イヤー、もうコンクールは当分こりごりですわ。発表まであと三時間、どうやって時間をつぶそう。さすがにホールに戻って、ウマイ若者の演奏を聞く、という傷口に塩を塗る自傷行為をする気力は残ってません。

すじ煮込みカレーを食べていると、Mさんからお返事が。

わかります。でも、ここはひとつ勇気を持って、若い人達の演奏を聴いてみてください。最初は、みんな凄く上手に、エネルギッシュに、そして完璧に聴こえるのですが、ホールの雰囲気に慣れてくると、いろいろと見えてきます。演奏のよしあしもはっきりとわかってきますよ。今後に活かせますって。案外と立ち直る特効薬になるかも。頑張れ! 気持ちを切り替えて、会場に戻りましょうよ。

ありがたいメールでございます(涙)。確かにその通りだ!と思い直し、レストランを出てホールに向かって力強く歩き出すと、前方にちょっとよさげな喫茶店を発見。見るからに、ドリップのコーヒーを入れてくれそうな店だ。あぁ誘惑に負けちまった。せっかく大船まで来たのだから、この町、楽しまなければ‥‥。
喫茶ぶーげん」、概観も内装もしっとりとしたウッディな感じ。カウンターには読売新聞が。ブルーマウンテン、ブラジル、いろいろある。迷った末、コロンビアをオーダー。店内は、白髪交じりの初老の男性ばかり。平日の昼間の静かな空気が流れています。取ってつけたようなBGMが流れていないのが、とってもいい。新聞をめくる音とサイフォンの音。街には音楽が流れすぎなのだ。

気分が落ち着いたのでホールに戻り、午後の8人の演奏を聴いた。ラスト3人が素晴らしかった。全国大会の演奏の順番は、やっぱり地方本選の点数順なのかな。ドビュッシー「喜びの島」を演奏したSさん、ラフマニノフ「楽興の時 op.16-3,16-4」を弾いたEさん、ショパンのバラード第2番を弾いたSくん。いずれも印象に残る演奏。中でも、Eさんの楽興の時 op.16-3がソウルフルな演奏で、今日のマイベストだった。

15分の休憩を挟んで連弾部門がスタート。今日は6組が演奏。連弾部門も大人の演奏を勝手に想像していたら、ホールにパパママ&おじいちゃん、おばあちゃんが続々入場。あ、お子ちゃまの演奏だったんですね。モーツァルトの弦楽セレナーデ、グローバーの「サーカス組曲」と、可愛いサロン風の楽曲のラインナップ。アマチュア部門の「審査」って感じの重い空気とは打って変わって、可愛いドレスを着た女の子の発表会のような雰囲気に。

と思うと、今度は大人の女性コンビが登場。え!連弾部門は大人と子供が一緒なの? これはちょっと無理がある気が‥‥。しかし、この大人の二人のドビュッシーのノクターン「祭り」が本当に素晴らしかった。何だか、横浜のみなとみらい、初夏の夕暮れ時の遊園地をそぞろ歩くような楽しい気分に。「やっぱ、音楽はアンサンブルだよな」と、連弾の魅力を満喫させていただいた。

ほぼ、オンタイムでアマチュア部門15人、連弾部門6組の演奏が終了。一時間後に審査発表と表彰式。会場にいてもつまらないので、またも鎌倉芸術館の外をプラプラ散歩することにした。エントランスを出て右手に曲がり、1分も歩かないうちにイトーヨーカドーを発見。そういや、平日の昼間にイトーヨーカドーなんて入ったことないな。興味津々でのぞいてみることに。

入り口のそばでは、これぞ「湘南ヤンキーガール」といったファッションの茶髪少女3人が、うんこ座り(失礼)している。店内に入ると、買い物カゴを下げたおばちゃんたちがたむろしている。彼女たち、熟年になったサザエさんを思わせる。うーむ、この地は、三つ編みを後ろで括ったドレス姿のお嬢、うんこ座りの湘南ヤンキーガール、熟年のサザエさん、そして鎌倉女子大生が、半径50メートル内に共存する何とも不思議なエリアだ。
イトーヨーカドー、ちょうどこの日は「20%・10%・5% 現金キャッシュバックセール」の最終日だった。至るところで「本日最終日」の貼紙がある。私は小売店の常識はよくわからない。でも、買った後に20%現金キャッシュバックするなら、最初から二割引で販売すればいいのに‥‥と素朴に思う‥‥。それから「本日最終日」、これは熟年のサザエさんのハートをつかむ呪文なのだろうか。ならば、もし私がイトーヨーカドーの販促責任者なら、ぺ・ヨンジュン、イ・ビョンホンあたりに「アニョハセヨ、本日最終日セヨ」とささやいてもらって、ガンガンとスピーカーで流すぞ‥‥なんて考えながら店内を徘徊するうちにイトーヨーカドー的世界に飲み込まれ、コンクールの審査発表のことはすっかり忘れちまった。

いかんいかん。3時40分にホールに戻る。客席に座って発表を待つ。定刻に主催者から「申し訳ありません。審査に時間がかかっております。表彰式は4時からの開始とさせていただきます」とのアナウンス。審査員の先生方、楽屋で議論が白熱しているのだろうか。ま、オレは関係ないだろうけど‥‥。

4時ちょうどにブザーと共に、審査員の先生方がステージに登場。まずは講評。どの先生も「アマチュアとは思えないほど、立派な演奏でびっくりしました」と。お褒めに預かり、ありがとうございますデス。

で、いよいよ、審査発表。

「アマチュア部門、今回は一位、二位、六位なし。三位、四位、五位、三人の入賞となりました」。

ちょっと意外だった。入賞に値する演奏は三人のみか。前回もアマチュア部門は一位は空席だったので、入賞のハードルは高くしてあるんだ‥‥。

「では、まず奨励賞3名から。名前の呼ばれた方は、立ち上がってご挨拶をお願いします」というアナウンスと共に、二番目に自分の名前が呼ばれる。

えっ? 私ですか?‥‥ビックリ。

とりあえず、立ち上がって審査員と客席の皆様にお辞儀をする。すぐ前のお父さんが不思議な顔で私を見つめた。エヘッ、お父さん、私、子供の参加者父兄と思っていたでしょ? 実は参加者なんですヨ‥‥。

奨励賞3人、優秀賞2名の後に、三位、四位、五位、入賞者3人の発表が。五位は、ドビュッシー「喜びの島」を演奏したSさん。四位は、ショパンのバラード第2番を弾いたSくん。三位は、ラフマニノフ「楽興の時 op.16-3,16-4」を弾いたEさんだった。今日、私が聴いたベスト3とまったく同じだ。誰もが納得できる入賞者だったと思う。

その後、ステージに上がり審査員から副賞をもらった。で、表彰状は?‥‥なんと、プリンタの故障により後で郵送とのこと。

最後に主催者のご挨拶。今回は全国18会場であったが、次回は全国50会場で予選を開催とのこと! 元気のいいお話であります。

ともかく初めて参加したコンクール。夜中、クラビノーバでヘッドフォンをつけて練習している割には健闘した気がします。いろいろ課題はありますが、奨励賞(=ゴラァ!練習せーよ賞)もらえたのは本当によかったな、と。

さてさて、ホールを出て帰ろうとすると私に声をかける女性が。

「鍵盤うさぎさんですか?」
「‥‥はい」
「私、Aです」

なんと!あの楽しい大人の連弾の女性、実はマイミクのAさんだったとは!

「どうも初めまして! とても素敵な演奏だったです」
「聴いていらっしゃったんですか?」
「もちろんデス」

Aさんは連弾部門最高位の二位入賞(一位は空席)。コンクールやステップやらに参加していると、いろんな方にお会いする機会があるものです。ちょっとうれしかった。

会場を出る前に受付で講評をいただく。受付美女1号&2号が、一人ひとり参加者を確認しつつ、講評が入った封筒を手渡している。最後、1号&2号と一緒に記念写真を撮りたいな、なんて思ったけど口に出す勇気がなかった‥‥これ、この日一番の後悔。

鎌倉芸術館を出て時計を見ると夕方5時。「さてさて会社に戻って、4月1日出向の引き継ぎ作業やらなきゃ」と、湘南新宿ライン籠原行きで東京に向かったのであります。

6時すぎに会社に到着。結局、夜11時まで仕事をして帰りの電車に乗ったら、何だか昼間のコンクールが、三日か四日前の出来事のように思えた。

取り合えず、一つ事務局にリクエスト。

アマチュア部門の全国大会、年度末、三月最終週の平日開催は避けてくだされ。


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