音大生への就職アドバイス【3】会社をアナリーゼしよう

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私が音大生を面接した機会はそう多くありませんが、共通して覚えているのは、今、面接に来ている会社が何を作っているのか、何をしているのか、あまりよくわかっていないことでした。

「会社研究」「業界研究」をやっていないといえば、それまでですが、ピアノ専攻の学生向きにわかりやすくいうと、初見演奏の際、楽譜を渡された途端、和声もリズムも考えず、いきなりピアノを弾き始めるようなものでしょうか。

初見演奏の際、まずはざっと一曲の構造、リズム、和声についてちゃちゃっと分析してから鍵盤に触れますよね。

たぶん、「面接で受け答えする」という本番に頭が行くばかり、志望する会社について下調べを行わなかったので、トンチンカンな受け答えになってしまったのだと思います。

音大生のための就職アドバイス、第3回は「会社をアナリーゼしよう」です。

音大、音高受験の際に勉強した楽典、最初のページを思い出してください。

まずは、「音楽の三要素」という項目があったと思います(正しくは“西洋音楽”の三要素ですが)。

● 旋律 メロディー
● 拍子 リズム
● 和声 ハーモニー

の三つですね。楽曲のアナリーゼとは、この三要素を分析することにほかなりません。

では、会社の三要素とはなんでしょうか。

それは、

● ヒト
● モノ
● カネ

と言われています。

志望する会社に入社したい、活躍したいと考えることと、楽曲を美しく演奏したいということは、私は同じようなものだと思います。よりグレードの高い演奏をするために、対位法や和声学の一定の理解が不可欠なように、会社でよりグレードの高い活躍をしようとすると、財務諸表や経営指標の分析が必要です。

しかしながら、ピアノで音楽を表現するために、和声学や対位法の完全なマスターが求められるわけではないですね。会社についても、三つの要素の基本的な事項さえ理解することができれば、就職活動においては問題ありません。

それでは、簡単な「会社のアナリーゼ」について説明しましょう。

ヒト、モノ、カネの三要素のうち、一番わかりやすいもの。それは「モノ」だと思います。

トヨタや日産なら自動車という商品がモノです。DellやHPならパソコンやマウスといった商品がモノです。ヤマハならピアノやギターなどの商品がモノです。

商品以外に、会社が持っている資産もモノに入ります。電力会社なら発電所、鉄道会社なら線路や鉄橋。そのほか、机やイス、パソコン等もモノ=資産になります。土地やビルなどの不動産を所有している場合、不動産もモノになります。

まずは、志望する会社がどのような商品、資産を持っているのかを、会社案内、会社ホームページから調べてみてください。これさえも知らずに、面接に臨む学生って少なからずいるものです。

次に、ヒト。

私は会社の三要素のうち、もっとも大切なのがヒトだと思っています。会社を代表する人といえば、代表取締役社長です。社長がどのような考えを持っているのか、Googleで検索すれば、上場会社の社長なら何らかのメッセージが検索できるはず。また、社長自らがブログやツイッターを更新されていることもあります。まずは、社長の人となりを探ってみるのをおすすめします。

それから、社員数、平均年齢、平均給与等も、会社四季報やヤフーファイナンスで調べれば、大まかにつかむことはできます。

また、友人の先輩、知人の先輩のツテをたどって、その会社に勤めている人、その会社と取引のある人に、実際にそこに勤めるヒトの特徴などを聞くことができれば一番です。くれぐれも、学生同士の情報や印象だけを鵜呑みにしないようにしましょう。

私は、よく学生に、卒論でもゼミ論文でもかまわないので、そこの会社、商品の研究をする目的で、会社の人事部、広報部を通して「取材」の申し込みをすることを勧めています。

実は、大学生自身、あまり自分たちの特権を理解していないようですが(私もそうでしたら)、学生が勉強や研究のために見学をさせてほしいと依頼があった場合、むげに断る会社はあまりないと思いますよ。熱意をもってお願いすれば、どんなに忙しくても、30分程度は時間を空けてくれたりするものです。

そういえば、数年前、不採用になった学生が、ミクシィをたどって私にアプローチしてきたことがありました。とても心のこもった文面で、よく事業のことを勉強している学生だったので、私はプライベートでお会いして、関連会社を紹介したことがあります。

最後にカネ。

「世の中、所詮カネだ」と言われますが、会社に関する限り、これは厳然たる事実です。ところが、カネと一言でいってもいろんな形態があります。現金、株券、債券、金(キン)……。

会社にとって、カネの形態の中で一番大切なのは何でしょうか? 私は、現金(キャッシュ)だと思います。会社は、ヒトがいても、モノがあっても、債券を保有していても、現金がなくなればその時点でおしまいです。

ですので、一概には言えませんが、まずは現金をたくさん保有している会社は安定性があると考えて問題ないでしょう

次に、会社概要に必ず書かれているのが「資本金」です。会社を作る際、成長させる際の“元手”です。資本金は多ければよいというものではないのですが、会社の規模を推し量るのに有効なモノサシに違いありません。ちなみに、ヤマハの資本金は285億3400万円、河合楽器の資本金は66億900万円です。

で、必ず調べてほしいのが売上高と経常利益。志望する会社のモノがどれほど売れて、どのくらい利益を出しているのかを知る数字です。こちらは、一年で見るのではなく、過去数年間を通して見ることで、会社の成長性を知ることができます。たとえ、一昨年大幅な赤字を出していても、昨年、黒字に回復しているのであれば、瞬発力が高い会社であると考えられます。

ヤマハの売上・経常利益の推移
河合楽器の売上・経常利益の推移

カネについて最後にもう一つ。「時価総額」です。時価総額は、発行株数×1株あたりの市場価格で算出されます。

学生が就職したい人気企業ベストテンというのが、一昨日、発表されていました。あの順位を見ると、投資家(プロ)に人気の会社と、学生(アマチュア)に人気の会社が、結構かけ離れているか、よくわかります。

クラシック音楽でも、一般的に人気があるピアニストとクラシック音楽ファンに人気のピアニストって、ランキングが異なりますよね? 音大生の皆さんなら、どちらのランキングのピアニストの演奏を聴いてみたいでしょうか?

投資家(プロ)に人気の会社とは「将来、もっと儲かる期待値が高い会社」です。プロが判断しているわけですから、会社を志望する際の一つの判断材料にはなりそうです。

下は本日時点での時価総額ランキングです。※単位100万円

1位 トヨタ自動車=14,050,590
2位 三菱UFJフィナンシャル・グループ=6,833,684
3位 日本電信電話=6,162,683
4位 ホンダ=6,100,805
5位 NTTドコモ=5,990,385
6位 キヤノン=5,154,996
7位 三菱商事=4,074,422
8位 任天堂=3,652,227
9位 日産自動車=3,648,217
10位 パナソニック=3,588,817

いかがでしょうか?

もちろん、志望する会社で自分が何をやりたいか? 何ができるのか?が 何より重要なポイントですよ。

その一方で、ヒト・モノ・カネ、三要素をしっかりとアナリーゼすることで、志望する会社が客観的に見えてくるはずです。

音大生への就職アドバイス(全10回)

【1】言葉で表現すること
【2】ピアノ専攻は体育会系である
【3】会社をアナリーゼしよう
【4】経営者視点で見たピアニストと指導者の違いとは
【5】ウサギの視線、カメの視線
【6】「苦手」は克服しなくてもよい
【7】ハングリーで、おバカでいよう
【8】プロとアマチュアに境界線はない?
【9】努力は夢中に勝てないんです
【10】No.1になりポジションを可視化する

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