音大生への就職アドバイス【4】経営者視点で見たピアニストと指導者の違いとは?

2016年7月17日

最初に問題です。

鳩山ゆき子さんは、自宅でピアノ指導者をやっています。
月謝5000円、30人の生徒を教えています。

小沢いち子さんは、ピアニストです。
月一度、市の主催のコンサートに出演しています。
出演料は来場者1人につき3000円で、50人が来場されます。

さて、鳩山さんと小沢さんは、
何が同じで、何が違うのでしょうか?

顧客は個人か? 法人か?

これ、新卒面接で訊ねると、普通は下のような回答が多いと思います。

【同じ点】
鳩山さんと小沢さん、共に「ピアノに関わる仕事」をしています。

【違っている点】
「ピアノの先生」と「ピアニスト」、仕事の内容が違います。

はい。もちろんこの回答で間違いではありません。

ただ、経営者ってこんな見方をするのです。

【同じ点】
鳩山さんも小沢さんも毎月の売上が15万円です。

【違っている点】
鳩山さんは、B to Cビジネスで取引先が個人(消費者)ですが、小沢さんは、B to Bビジネスで取引先は法人(市)です。

要は「数字」と「事業モデル」を軸に分類するのです。

いかがでしょうか?

実はこの問い、ビジネスの本質を内含しています。

例えば【違っている点】に注目してください。

仕事の内容で分類している学生の視点は、仕事をしている側、つまり「供給者」を分類しています。

一方、事業モデルを軸に分類している経営者の視点は、取引先、つまり「顧客」を分類しているのです。

「誰を見るのか」、ここは大切なポイントになります。

リスクとパフォーマンス

次に、事業のパフォーマンスとリスクについて考えてみましょう。

鳩山さんは、30人の生徒に1時間レッスンを月4回行うと、120時間の労働時間になります。

一方の小沢さんは、コンサートの練習で毎日2時間ピアノ弾くと、60時間の労働時間(プロにとっては練習も労働とみなします)になります。本番とリハーサルを10時間行うと、月の総労働時間は70時間です。

ざっと比較をすると、同じ15万円の売上でも小沢さんの方が事業のパフォーマンスが高いことがわかります。

ただ、鳩山さんの取引先は生徒30人ですが、小沢さんの取引先は市役所1か所です。翌月、鳩山さんは、生徒が5人辞めても12万5000円の売上がありますが、小沢さんは、唯一の取引先である市が予算削減でコンサートを休止すると、月の売上は0円になってしまいます。

同じ15万円の売上でも、鳩山さんよりも小沢さんの方が事業リスクが高いことがわかります。

では、経営者はどう考えるでしょうか?

ピアニストとしてコンサートに隔月出演、指導者として生徒15人に教えることができないものか? そうすれば、売上は変わらずに、事業リスクを分散させることができますね。

これが事業のポートフォリオです。

30代、40代になっても一般企業で残っていける人は、このような発想ができる人といえます。

音大生への就職アドバイス(全10回)

【1】言葉で表現すること
【2】ピアノ専攻は体育会系である
【3】会社をアナリーゼしよう
【4】経営者視点で見たピアニストと指導者の違いとは
【5】ウサギの視線、カメの視線
【6】「苦手」は克服しなくてもよい
【7】ハングリーで、おバカでいよう
【8】プロとアマチュアに境界線はない?
【9】努力は夢中に勝てないんです
【10】No.1になりポジションを可視化する


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