音大生への就職アドバイス【1】言葉で表現すること

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私は現在、小さな情報通信関連会社の経営に携わっていますが、昨年4月までは、ある上場企業の部長職を務めてました。なので、過去6年ほど、毎年、新卒採用の面接官をやりました。音楽大学の学生の面接の機会も、少ないながらありました。

現在の師匠についてピアノの学習を再開してから、音大の学生、特にピアノ専攻の学生と知り合う機会が増えました。多くのピアノ専攻の学生は、卒業後の進路として、演奏家や指導者を目指しているでしょう。ただ、もし一般企業への就職を希望する人がいれば、私から何らかのアドバイスができたら、と思っています。

というのも、音大、特にピアノ専攻の学生は、在学期間、懸命に勉学(=練習)に励んでいる割に、一般企業の新卒採用において敬遠されがちだからです。私が見るところ、学生の本分である勉学については、一般大学の文系学生に比較しても、十分な努力をしていると思っています。

では、どうして敬遠されるのでしょうか?

まず、一般企業には音大出身者がほとんどいないため、音大生が何を勉強しているのか? 普段何をしているのか? どういう人種なのか? そもそも音大とはどういうところなのか? が、まったくイメージできないのです。冗談のようですが、一般企業の会社員にとって、音大生のイメージは、『のだめカンタービレ』のキャラクターなのです。だって、「のだめ」以外、音大を知る機会が本当にないのですから。企業の採用担当は「わからない人を採用する=リスク」と捉えがちです。

なので、音楽大学が音大生採用のメリットについて、もっと企業側に説明や働きかけを行うことも必要でしょう。ですが、まずは音大生自身が、大学で何を今やっているのか、就職して何を生かしたいのかを、しっかりとアピールすることが大切だと思います。

今回は、まず第1回のアドバイス、「言葉で表現すること」です。

私は、このブログで幾度となく書きましたが、音大ピアノ専攻の学生、出身者の演奏をステージで聴くと、「タッチが違う!響きが違う!」と、毎度、舌を巻いています。そして、目の前で話をすると、とても小柄な女性なのに、ステージでピアノを演奏すると、実際の体格よりもはるかに大きく見えることが何度もありました。

要は「音楽」というホームグラウンドでの表現なので、私のようなアマチュアのピアノ好きに比べると優位性があるわけですね。

ところが、一般企業の新卒面接においては、自分を音楽で表現することはできません。言葉で表現することが求められるのです。

冒頭に書きましたが、一般企業には音大出身者はほとんどいません。私は、音大出身の人事部長なんて聞いたことがありません。履歴書に書かれたゼミの研究、卒論テーマが、経済学、法律、社会学、語学等なら、面接する側も数少ない知識をベースに志望者とコミュニケーションを取ることが可能です。

ところが、例えば、卒業課題が「バッハの平均律クラヴィーア曲集、その校訂の変遷」なんて書かれていても、私のようなマニアなクラシック音楽好きの面接官でもない限り、何をフックに質問をしていいのか、見当がつかないのです。面接官を説得する最上の方法は、ピアノを持ってきて目の前で演奏することができればよいのですが(小さなスピーカー付きのMP3プレーヤーを持ってきて、自分の演奏を面接官に聴かせるという手もあります)、言葉で説明する以外ないのです。

「言葉で説明する」、ここが大切なポイントです。

面接官は“クラシック音楽なんて中学、高校の音楽の授業以外、聴いたことがない人”と割り切ってください。アニメや漫画の「のだめ」を見たことがある面接官なら、あなたはラッキーです(最悪のケースは、中学、高校の退屈な音楽の授業で、クラシック音楽が嫌いになった面接官かも)。クラシック音楽を聴いたことがない人に、音を聴かせることなく、バッハの平均律の魅力をいかに伝えるか?

もし、面接終了後、面接官が自分の机のパソコンでAmazonにアクセスをして、平均律のCDを買わせることができれば大成功です。たぶん次の面接に進むことができるでしょう。次の面接に進めなくても、あなたは営業スタッフとしての資質が十分ありますよ。安心してください。

では、どうすればいいのか?

大切なことは、相手のホームグラウンドに立つことです。

あなたは、自分の卒業課題「バッハの平均律クラヴィーア曲集、その校訂の変遷」のセールスマンなのです。「バッハの平均律クラヴィーア曲集」を知ることが、いかに面接を受ける会社、面接官の仕事の役に立つのか?を売り込むのです。

例えば、私が、情報通信企業の面接官にバッハのフーガの魅力について説明をするなら、マルチタスクとプロセス管理、情報処理の方法をベースに対位法を説明してみます。面接官がプログラマー出身なら、きっと心にグサっと刺さるはず。

鉄道会社の面接官に説明するなら、フーガを鉄道運行のダイヤグラムを例に説明してみます。一時間ごとの大きなダイヤグラムを主唱に、10分ごとの小さなダイヤグラムを追唱に見立てること。フーガの楽譜を面接終了後にぜひ見て欲しいこと。フーガの楽譜と鉄道のダイヤグラムが、ビジュアルとしていかに似ているのかを力説します。

↓ 山陰本線のダイヤグラム(Wikipediaより) ↓

山陰本線のダイヤグラム(Wikipediaより)
いかがでしょうか?

就職活動のマニュアル本に書かれている「面接ノウハウ」なんて、はっきりいって決め手になりません。面接官は、学生時代に何をしたのか、何を得たのかを知りたいのです。

音大生への就職アドバイス(全10回)

【1】言葉で表現すること
【2】ピアノ専攻は体育会系である
【3】会社をアナリーゼしよう
【4】経営者視点で見たピアニストと指導者の違いとは
【5】ウサギの視線、カメの視線
【6】「苦手」は克服しなくてもよい
【7】ハングリーで、おバカでいよう
【8】プロとアマチュアに境界線はない?
【9】努力は夢中に勝てないんです
【10】No.1になりポジションを可視化する

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