感想/エレーヌ・グリモー ピアノリサイタル@東京オペラシティ

エレーヌ・グリモー演奏会・東京オペラシティ
月曜日、エレーヌ・グリモー、日本で五年ぶりのリサイタルを聴きに出かけました。前回は五年も前になるのか。つい先日のように感じる。光陰矢の如し、だな。

今回のソロリサイタルは大阪・名古屋・東京で開催。前半がニューアルバム『Water』の収録曲、後半がブラームスのピアノソナタ 第2番というプログラムでした。

【プログラム】

  • べリオ/水のクラヴィア
  • 武満徹/雨の樹・素描II〜オリヴェ・メシアンの追憶に
  • フォーレ/舟歌 第5番 op.66
  • ラヴェル/水の戯れ op.30
  • アルベニス/アルメーリア ト長調(イベリア組曲 第2巻より)
  • リスト/エステ荘の噴水 (巡礼の年 第3年より)
  • ヤナーチェク/アンダンテ(霧の中より)
  • ドビュッシー/沈める寺 (前奏曲 第1集)

(休憩)

  • ブラームス/ピアノソナタ第2番 嬰へ短調 op.2

(アンコール)

  • ラフマニノフ/「音の絵」op.33-2
  • ラフマニノフ/「音の絵」op.33-3
  • ショパン/3つの新練習曲 第1番 ヘ短調

前回は最前列で聴いたけれど、今回は8列目でステージに向かって一番右。B席にしては、よいポジションです。

8枚の水彩画による「展覧会の絵」

彼女の最新アルバム『Water』は、すでに何度も聴いています。このアルバムはニティン・ソーニーとの共作で、クラシックのピアノ楽曲とハウスミュージックが交互に流れるコンセプチュアルなアルバム。なので、このアルバムを聴く際、グリモーのピアノ曲だけを抜き出して聴いたりしていませんでした。

横道にそれますが、最近、クラシックのピアニストと、ハウス系ミュージシャンとのコラボレーションは流行なのでしょうか。アリス=紗良・オットも、ポストクラシカルの俊英、オーラヴル・アルナルズと組んで、ショパンのコンセプトアルバムを昨年リリースしてました。面白い動きだなと、ちょっと注目しています。
今回のリサイタルはグリモーのピアノソロのみ。アルバムと同じ曲順とはいえ、編集されたアルバムと生のライブとでは、同じ演奏者なのにかなり趣が違って聴こえました。

「水の戯れ」「エステ荘の噴水」「沈める寺」とポピュラーなピアノ曲が並んでいるので、一見、「“水くくり”の名曲アルバム」のように見えちゃいます。ところがどっこい、想像のはるか斜め上を行く演奏でした。

さながら、水彩画による『展覧会の絵』

8曲の演奏を途切れなくつなげ、「キエフの大門」にあたる「沈める寺」に向かって、ぐいぐいと聴衆を引っ張っていくのです。スペクタクルな大組曲でした。

中でも、アルベニスの「アルメーリア」からリストの「エステ荘の噴水」への流れが印象的でした。私、意外なことに、彼女のレパートリーの中でもリストに惹かれるものを感じるのです。前回のリサイタルの「ピアノソナタ ロ短調」も緊張感高い名演でした。ちょろちょろとした噴水ではなく、なみなみとした水量の大ぶりな噴水に息を飲みました。

ブラームスのピアノソナタは?だったかな

一方、後半のブラームスのピアノソナタは正直「?」でした。

彼女はライブにおいて、ある種の「着地点」を定めたり、逆算して弾くタイプではなく、「一所懸命」といいましょうか、一瞬の時間にすべてを賭けるピアニストだと思います。そのギリギリ感がスリリングではあるのですが、時折、情念がコントロールできる範囲を超えてしまうときがあるみたい。

野球のピッチングでいうと、ストライクゾーン内角低めギリギリに投球しているんだけど、時々連続してボールの判定になってしまうような。

若きブラームスの熱さと情念は十分に伝わりました。一方、大規模なソナタの構築美、繊細な内声が所々欠けてしまったようで、ちょっと残念でした。

私は彼女の熱烈なファンですが、(前回のリサイタルで聴いた)疾走するモーツァルトのピアノソナタ K.310 イ短調の第1楽章と共に、どうやらマッチする楽曲とマッチしない楽曲があるみたい。

ま、それはともかく、ステージでのお姿は本当に美しい! 今回も黒のブラウスとパンツ、いつもながらモノトーンの衣装だけれど、気品とオーラに目が奪われました。

次はいつ来日してくれるんだろう。

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