演奏会の商品は「演奏」ではなく「体験」では?

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レストランのテーブル
オープンキッチンのレストランで食事をした際、時々あるのが、厨房内のもめ事が漏れ聞こえてくること。これ、客がいたたまれない気持ちになるんですよね。

シェフが若手を叱りつけながら調理していたり、フロアスタッフと厨房の連携が悪くて殺伐とした空気が漏れてきたり。

私、基本的にランチもコンサートも一人で出かけることが多いです。で、オープンキッチンのレストランだと、キッチン前のカウンターに通されることがしばしば。

本来、オープンキッチンの楽しさは、シェフと客がコミュニケーションする中で、メニューをオーダーしたりできる点。ところがランチタイムだと、シェフは短時間で決まったメニューをさばくことが重要なので、人気のお店は客とコミュニケーションする余裕なんてありません。

で、一人、キッチン前のカウンターに通されて食事をしても、話し相手がいないので、どうしても厨房の中のやりとりが耳に入ってしまうのです。

出されたお料理はとびきりおいしいのに、厨房の会話のせいでせっかくの気分が台無し。

そういうお店は負の記憶が残っているので、自然に足が遠くなります。ところが、他のレストランでも同じ経験をすることが、半年に一度くらいあります。

うーん。レストランにとっては料理そのものが商品ではなく、料理、時間、空間等が一体となった「体験」が商品だと思うのです。

「体験」を商品にする店(吉野家、すき家等、ファストフード店以外)は、フロアと厨房をしっかり仕切った方が安全なのでは?と思ったりしました。オープンキッチンってのは、シェフと客の人間関係ができあがっている場合(寿司屋と常連客等)でないと、リスクの方が大きい気が。

実は、これ、レストランだけでなく、コンサートにも言えますよね。

演奏家にとって演奏をするのは、シェフにとって料理のようなもの。でも、チケットを買った聴衆にとっては、演奏そのものよりも、コンサートでの「体験」が商品だと思います。ここの視点こそ、単なる聴衆(一見さん)に終わってしまうのか、ファン(顧客)になってもらえるのかの重要なポイントではないでしょうか。

私の本業であるITの領域では、ユーザーエクスペリエンスデザイン(UX)という言葉が、しばしば議論になります。「製品やサービスの使用者がどのような体験をして、どのような満足を得られるか」という全体設計です。

「デザイン」という言葉から、一般的にはデザイナーによる(今話題の)ロゴやレイアウトの製作をイメージしがちですが、現在では、どちらかというと製作にかかる前段のコンセプトワークに重きを置かれています。

「コンサートに来た聴衆が、どのようにいい体験をしてもらえるか?」、これも一つのデザインだと考えられます。そのためには演奏会の告知はもちろん、当日聴衆がどのようなルートでホールに来るのか、どのように休憩時間を過ごすのか、演奏会終了後にどうするのか等の仮説と検証は大切です。

ここは主催者の役割でもあり、マネジャーの役割であるわけですが、演奏家も少しだけ意識した方がよい点ではないでしょうか。