感想/金子一朗ピアノリサイタル 2015夏

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金子一朗ピアノリサイタル金子一朗氏のリサイタルに出かけました。リサイタルを聴くのは4度目(だった気が)。

金子さんについて簡単に紹介しますと(ご存知の方が多いと思いますが)、本職は数学の先生で、現在は早稲田中学・高校の理事。40歳を過ぎてから、2005年のPTNAピアノコンペティション特級部門で優勝。以後、粛々とピアニスト、指導者としての活動を続けられています。いわば、私のようなアマチュアピアノ好きの“星”のような存在。

初めて彼の存在を知った時、「すごい人がいるものだな」とため息が出ました。ところが、中年男性のクラシックピアノ好きってのは絶対数が少ないのか、幸いにも知り合いになる機会に恵まれ、ステップでご講評いただき、親しくお話をするようになり、ついには一緒にステージに立つようになり……。

モダンピアノ愛好家によるバロック演奏会の報告(2014/4/6)

不思議なもので、遠い存在だと思っていても同じ指向性で活動を続けていれば、どこかで交わる機会があるものです。1億人もの人が日本にいるのに。人生でそんな経験が何度かありました。

ペダリングの妙に驚愕

金子さんのリサイタルの特徴は、とにかく演奏される楽曲が多い! 下が今回のプログラム。

ラヴェル/組曲「鏡」
ラヴェル/ 組曲「クープランの墓」
(休憩)
スクリャービン/2つの詩曲Op.32
スクリャービン/ソナタ第4番嬰ヘ長調Op.30
スクリャービン/2つの詩曲Op.63 1. 仮面 2. 見知らぬもの
スクリャービン/ソナタ第7番白ミサOp.64
スクリャービン/詩曲「焔に向かいて」Op.72
スクリャービン/幻想曲Op.28

ラヴェルの大型組曲2曲とスクリャービンのソナタ2曲。リサイタル2回分といっても過言ではないプログラム。フランス料理のフルコースですね。もちろん、このプログラムの後にアンコールがあるわけです。

いつもながら、音楽でお腹いっぱいになりました。これだけ楽しんで3,000円ですから、なんてコストパフォーマンス! クラシックピアノ界の「俺のフレンチ」「俺のスパニッシュ」みたい(笑)。比較するのはおかしいけれど、先日観たストラヴィンスキーの『兵士の物語』は一時間少しで12,000円でした。

感想/ストラヴィンスキーのバレエ『兵士の物語』(2015/8/8)

一曲一曲、隅々まで創意工夫がされており、本当に勉強になりました。中でもペダリング。ダンパーとウナコルダ、二つのペダルの微妙な操作でこれほどたくさんの音色が使い分けられるのか!と驚きました。

私など、普段、手の指のタッチには気をつけているけれど、ペダリングの微妙な踏み込みにまで意識が到達していません。指腹のタッチと同じくらい、足裏のタッチに気を配られていました。響きに息を飲むところが多数でした。

個性あふれるラヴェル

全プログラムの中で一曲を挙げるなら、『鏡』の「道化師の朝の歌」が新鮮だった。『夜のガスパール』の「スカルボ」と同じく、超絶技巧の器楽曲として、いかにも“リサイタルの花”という位置付けでドラマチックに演奏されがち。彼は幾分軽めに「歌心」を大切にされていた。素敵だった。

そして、アンコールの「亡き王女のためのパヴァーヌ」。ダンパーペダルを極力使わない演奏にびっくり。超絶技巧とは違った高度なテクニック(腕を脱力した上でのコントロール)がないと、ダンパーなしで美しく弾くことはできないはず。これは一種の「挑戦」だと思った。「挑戦するピアニスト」(金子一朗氏の著書)の名にふさわしかったです。

また、全曲の中で下のBのオクターブを際立たせ、ホールにスコーンと響かせる設計はお見事!

ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」

次回、12月に杉並公会堂でスクリャービンをテーマにしたリサイタルがあります。ぜひ!

金子一朗スクリャービン・セレクション第1回
日時/2015年12月14日(月) 19時開演
場所/杉並公会堂小ホール
チケット/3000円

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