金子勝子門下生50周年記念演奏会の報告(前編)

2015年7月23日

50周年コンサート・紀尾井ホール
遅くなりましたが、先週5月2日(土)に紀尾井ホールで行われた「金子勝子門下生による50周年記念コンサート“音の調べ”」のご報告です。

まず最初に、改めてご来場いただいた皆様、ありがとうございました。まことにもって拙い演奏ではございましたが、前に未来のピアニストたち、後ろに新進ピアニストたちの素晴らしい演奏がありましたので、ま、能の合間に演じられる狂言のように楽しんでいただけたのでは、と、自分に強く強く言い聞かせております。

終演後、お母さま方から「笑顔は牛田くんと双璧でしたよ」とお褒めの言葉をいただき、そこは会社員として20年以上のキャリアが物を言ったのではないかと自負しております。演奏はともかく、笑顔は重要!

前置きはこのくらいにして、レポートですね。

お気に入りのネクタイがない!

本番前日は早めに寝ようと思っていたのですが、受付でお渡しする友人への招待チケットを封筒に入れたり、防音室で最後のあがきの指ならしをしているうちに、深夜1時ごろになってしまいました。

寝る前に、明日着るスーツをクローゼットから取り出し、扉に掛けておこうと準備をしたら、ない! お気に入りのピンクのネクタイがない! 

TOMORROWLANDの薄いグレーのスーツには、春っぽいピンクのネクタイ!と決めていたのに。寝室のクローゼットの洋服を一枚一枚めくっても見つからないので、真っ暗な息子の部屋に乱入してクローゼットの中を探しまくったけれど、やっぱりない! ムキになって家中を探しまくりましたが発見できず。午前3時に捜索を打ち切りました。仕方ない。ラルフの黄色いネクタイにするか。

朝9時に紀尾井ホールに集合ってことで、最寄りの四谷駅に8時40分到着から逆算すると、7時40分の電車に乗らなければなりません。iPhoneとAndroidスマホ、2台のアラームを朝7時にセット。無念な想いを抱きつつ床につきました。

起きると青空が澄み渡り、気持ちのいい朝。眠い目をこすりながら紀尾井ホールへ。

8時40分に四谷駅到着。実は私、麹町に本業の大きな取引先があります。スーツでビジネスバッグを持って四谷駅を出ると、何を考えたのか(何も考えなかったのか)新宿通を取引先のある半蔵門方面に歩き出してしまいました。20メートルほど歩いて「そっちじゃない!」と気がつきました。いかん。おじさん、ボケ始めてます。

気を取り直して上智大学の横道を南へ。9時10分前に紀尾井ホールに到着。

50周年コンサート・紀尾井ホール
入り口に着くと、ちょうど師匠や地方から泊まりで来た少年のご家族、藝高生女子らが続々と登場。師匠が開口一番、「うさぎさん、スーツ、春らしくてお似合いよ」と。「先生、お気に入りのピンクのネクタイなら、もっと素敵だったんですよ!」と主張したかったけど、大人気ないのでやめました。

9時にホールのスタッフに案内してもらい、楽屋控え室へ。控え室は男女別々。受賞者演奏会等に出演すると、たいてい男性比率が低いので、男性より女性の部屋の方が広かったりします。が、この日は演奏者全16人中男性が6人。なかなか賑やかな男子控え室になりました。

本番前に当日リハーサルは3回あって、1回は小さな楽屋のアップライトピアノで、1回は大きな楽屋のグランドピアノ、もう1回はステージとなっています。

リハーサルというよりレッスンだった

9時15分から、私が先頭バッターとして小さな楽屋のアップライトピアノでリハーサル。持ち時間は20分間。アップライトピアノで楽曲を弾くとグランドピアノのイメージが崩れてしまうので、20分間、スケールとアルペジオ、師匠のメトードで指ならしに徹しました。

10時すぎからはホールでのリハーサル。紀尾井ホールでスタインウェイのピアノを弾くのは今回3度目ですが、最初の一音を弾いただけでため息の出る美しさ。響きにうっとりしながら、ラモーの「ため息」を2小節ほど進んだところで、師匠からストップが。

あなた、バロックの緊張感が足りないわよ!

え、バロックの緊張感ですか! 師匠、それをこのタイミングで言われても。ていうか、私、緊張度はマックスですが。

なんて思いながら、再度、最初から弾き直しました。すると「まだ、違う」と。その後は、スケールをやり直したりして、リハーサルというよりレッスンモードに。結局、モーツァルトのアダージョ、最後まで弾けませんでした。トホホです。

ま、今、思い直すと、紀尾井ホールのスタインウェイでレッスンなんて、ぜいたくすぎる体験ではありましたが。

リハーサルを終えて気分転換にホワイエに出ると、牛田智大くんが登場。

牛田くんの成長、鍵盤うさぎの劣化

手を叩きながら「音がきれい。すごーい」と100万ドルの笑顔で褒めてくれました。いやー、キミに言われるとは。でも、彼は本当に裏表のない少年なので、素直に信じることにする。

牛田くん、背が高くなって、声も太くなったなぁ。ホワイエに2人きりだし、せっかくなので記念撮影。そういや、5年前も2人で紀尾井ホールで写真撮ったっけ。あの頃は今みたいな有名人じゃなかったけれど。

演奏会の次の日、5年前の写真を探してみたんです。で、愕然としました。下が比較写真(すいません。ボカしてます)。

牛田智大くん・紀尾井ホール
いやはや、5年間で牛田くんの背丈の成長と反比例して、私の顔が大いに劣化したことをまざまざと見せつけられました(ネクタイはお揃いですけどね)。

人生って残酷です。

アラウンドフィフティ、私の年齢になった牛田くんってどうも想像できないっす。しかし、まぁ清水和音氏も、私が十代だった頃は凛々しい青年ピアニストでしたが、今じゃ貫禄の熟年ピアニストですから。友人に、昔、清水氏の追っかけをやってたピアノの先生がいるんですが、先日、清水氏を追っかけていたことを「私の黒歴史」として哀しい瞳で語っていました。

人生って残酷です。

その後、牛田くんのリハーサルも客席で聴きました。私のような素人は一曲を通して弾きますけど、プロのピアニストのリハーサルは、時間が短いと、ホールの響きを確認するように楽曲の一部を取り出して弾いたりします。そういうのピアニストっぽいので、一度真似してみたい。

あと、曲と曲の間に布巾で鍵盤の上をさっと拭くのも一度やってみたいんです。あれ、なんか舞台慣れしてそうじゃないですか。私の場合、緊張してポーンと音を出してしまったり、布巾だけ置きっぱなしにして舞台袖に戻ってきそうですが。

それはともかく、牛田くんのリハーサルってユニークだったな。

だって「乙女の祈り」弾くんだもの(ちなみに「乙女の祈り」はこの日のプログラムにないです)。「乙女の祈り」なんて生で聴いたの、小学生の頃のピアノの発表会以来じゃないかな。この曲、昭和の「NHK名曲アルバム」で流れたり、「赤いシリーズ」で名家の令嬢役・山口百恵が応接室で弾いてそうじゃないですか。

終わってから「牛田くん、乙女の祈りでリハーサルするんだ!」と尋ねたら、「響きを確認するのにいいんです」と。なるほど、確かに右手のオクターブのユニゾンでメロディーを弾いた際、どのように音が帰ってくるかを確認するにはいい曲かも。

ウォーミングアップに余念がないプロピアニストたち

ひと通りホールでリハーサルが終わった後は、11時30分から全員の記念撮影。発表会の記念撮影では、基本的に最後列、客席に向かって一番左端を定位置にしております。うさぎの生態として、隅っこがリラックスできるのです。

ところが、今回、一番前の席に座るようカメラマンから指示されました。場所はあらかじめ決められていたみたい。なんか、前の方に座るのは落ち着きませんでした。出演者16人の中では高齢者なので「敬老」の意味があったのかもしれません。

人生って残酷です(しつこい)。

写真の位置を一人ひとり指定されている間、ステージ上のプロピアニストの人たちに目をやると、やっぱり違いますね。大崎結真さんも中澤真麻さんも、手や腕を回してストレッチをしておられるのです。

金子勝子門下生50周年記念演奏会
そうそう、ピアノって内部は「鋼鉄の打楽器」ですからね。演奏という行為は肉体でみると運動そのもの。30分間の演奏は30分間の運動なわけで、準備運動とストレッチは意外に重要です。村上隆先生は著書『ピアノがうまくなる理由 ヘタな理由』の冒頭で、準備運動の重要性について述べておられますし。

私もコンクールの演奏前、舞台袖でアキレス腱伸ばしと立位体前屈を必ずするようにしています。結構、緊張がほぐれます(それでも緊張しますよ、もちろん)。

写真撮影終了後、いったん楽屋に帰ってしばし休憩。昼食のお弁当が用意されていたのですが、口をつけませんでした。一度、国際アマコンの予選で、演奏前に昼食を食べたところ、緊張からかお腹が痛くなって何度もトイレに足を運んだことがありました。以来、演奏が終わるまで、お腹に食べ物を入れないようにしています。

最強の男子二人に挟まれて

楽屋では、角野隼斗くんといろいろおしゃべりしました。彼とは発表会後のクリスマス会で、司会とBGMピアニストのコンビを長年組んでいます。「そろそろクリスマス会がマンネリ化してきたので、今年はちょっと方向性を変えたいよね」とか、ま、そんな話です。

そして最後のリハーサルは、角野くん → 私 → 牛田くんの順番。最強の男子に挟まれてしまったものだ。二人の演奏動画は下のページで見られますので、ぜひ。

牛田君&角野君、最強男子に挟まれるリハーサル(2015/4/7)

紀尾井ホール・リハーサル
前の角野くんのリストの「メフィストワルツ」、そばで堪能させてもらいました。いや、もう私のリハーサルはいいので、もう一回最初から聴かせてよ!と嘆息しました。

という感じで、あっという間に本番ステージが近づいたわけであります。

後編に続く


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